2005年01月09日

  A Beautiful World

G初詣の帰り、渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されているグランマ・モーゼス展に行ってきました。
昨年、諏訪のハーモ美術館で初めてモーゼスの絵を観てから、もっと沢山の作品を観てみたいと思っていたので年明け早々なんともいい機会に恵まれました。
お正月もあけ、会場は通常の平日同様に人はまばら。
絵はやっぱりゆっくりと鑑賞するに限りますね。
そしてそういう時間ってすごく贅沢。

グランマ・モーゼスは、アメリカ人なら誰もが知っているおばあちゃん。
画家としての名声はもとより、70歳で初めて油絵の具を手にした、
80歳で初めてニューヨークで個展を開いた・・等のエピソードにまず驚くのではないでしょうか。
私もそうでした。
なので、モーゼスの描くアメリカの古きよき時代、東部の小さな農村の自然とともにある素朴で質素な暮らし・・そんな心温まる絵に惹かれると同時に、グランマ・モーゼスという女性そのものにも強く関心を持ちました。

G

会場に入ると、作品が四季を追うように展示されています。
春、夏の濃い緑、風がそよぐ様子、そして一年中で最も楽しい行事が続く秋から冬。
それはアップルバター作りであったり、感謝祭であったり、クリスマスであったり・・。
私はこの展示会に来るまで、そんな温かで豊かな暮らしと同時並行でモーゼスが絵筆をとっていたとばかり思っていましたが、
それは少々違っていました。

モーゼスが絵を描き始めた時代(1930年頃)にはアメリカにも少しずつ近代化の波が押し寄せ、かつて活気のあった農村も若者が街へと流れていくのに伴い随分とさびしいものになっていたようです。
したがってその生涯を閉じる101歳までに描いた1600点余りの作品はリアルタイムではなく、古い雑誌や新聞の切り抜き、彼女自身の体験やこれまで見てきた光景、イマジネーションなどが合わさって生み出されたものだったのです。
目の前にある風景をスケッチしていたのかとばかり思っていたので、そうではなかったと知った後は、美しいものを(後世に)残すことが自分の務めである。といったモーゼスの言葉が私の中で一段と浮き彫りになりました。

そしてその言葉通り彼女が描いた素朴で温かい人々の生活の様子や風景は、ささくれ立った心に平和で穏やかな気持ちを溢れさせ、アスファルトの上で育った現代人に、わずかばかり残る自然への郷愁や幸福だった子供の時間を呼び起こしてくれるような気がします。
それは風景を模写しただけでないなにか、一生懸命よき日々を思い出しながら描いたというモーゼスの希望や愛、自然への感謝の気持ちなどが絵の中に織り込まれ、観るものに伝わってくるからだと思います。

またモーゼスという女性を語る上で面白いなあと思ったのは、
「ただ坐ったまま、夫からお金を受け取るような生活は考えただけでいやでした」と言った言葉。
今で言うキャリアウーマンのひとりだった彼女は、1887年に結婚するものの主婦という枠におさまらずバター作りやポテトチップ作りに精を出し、積極的に家計に貢献し実業家としての才能もあったそうです。
いつの時代、そしてどんな境遇でもスーパーウーマンはスーパーウーマンなのですね。
仮に絵を描いていなくても多分生きがいをみつけて充実した人生を送ったことでしょう。

でもそんなスーパーウーマンは、画家として世界中にその名が知られ時のアメリカ大統領に表彰されるようになっても、華やかな名声とは裏腹になんら変わらない生活を続けていたそう。
朝起きて自分のためにコーヒーを淹れ、毎日台所仕事をし合間に絵を描き制作中でも孫がやってくれば手を休めて相手をする。
優しいおばあちゃん。
これだけ多くの人々から受け入れられたのも、きっとモーゼスのこんな素朴で控えめな人柄によるものが大きいのかもしれません。


G私がモーゼスの絵の中で特に素晴らしいなと思う一枚。
「A Beautiful World(美しき世界)」
小高い丘の上から自分の住む世界を眺めたこの絵は、特に派手さや際立ったテーマはありませんが、時が止まったかのようにも、また人間の営みにかかわらず時は悠久に流れているんだということを感じさせてくれるようにも思えます。
静かで多くの言葉を必要としない、タイトルそのものの絵。
またモーゼスの絵はこのようなパノラマ的なものが多く、それが魅力のひとつかなとも思います。


〜本日(1月9日)教育テレビ『新日曜美術館』でグランマ・モーゼスが紹介されました。

『グランマ・モーゼス展』

*渋谷Bunkamura ザ・ミュージアム
1月2日(日)〜1月30日(日)

今後の巡回予定です

*京都展 大丸ミュージアムKYOTO
3月17日〜3月29日

*札幌展 大丸札幌店7階ホール
5月11日〜5月23日
posted by みみいこ at 22:03| Comment(6) | TrackBack(1) | Love Art | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とってもいいタイトルですね。解説も勉強になります。感謝!
Posted by ryosanjin at 2005年01月10日 00:34
ryosanjinさん
有難うございます。いやいや、モーゼスの描く絵の雰囲気をどう書いたらいいか悩みました。結果は、長くなると文章力が足りないのがバレバレです^^;
Posted by みいこ at 2005年01月10日 16:09
今年に入ってから何度かBunkamuraに行く機会があって、そのたびに目の端にポスターが見えてて気になってました。
みいこさんの解説を読んだら、見てみたくなりました。行ってみようかな〜。
変わり行く江戸の町で、古きよき江戸を残そうと「名所江戸百景」を描いた広重と重なります。
Posted by Fumiko at 2005年01月11日 00:09
Fumikoさん
モーゼスの作品がこんなに一堂に展示される機会はなかなかないかもしれません。
よかったら足を運んでみてください〜♪
へぇー広重もそうだったんですか。絵って、なんとなくいいなーというところから始まってもう一歩踏み込んでいくとまた違った見方が出来ますね。作者の思いを感じながら観るのもそのひとつかな?
Posted by みいこ at 2005年01月11日 01:18
会社から終電で帰宅する前の一時を、心を暖かくしてもらえました!おっと終電だ、またゆっくり遊びに来させてもらいますね。
Posted by かわぺー at 2005年01月11日 23:47
かわぺーさん、終電までお疲れさまでーす!
暖冬暖冬と言われながらも、ここんとこ寒いですねー。そういえば私もモーゼス展の帰りはとても暖かい気持ちでした♪主催者側もきっと季節を選んで開催したんでしょうね笑。
Posted by みいこ at 2005年01月12日 01:07
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Excerpt: みいこさんのA Beautiful Worldにトラックバック! 渋谷Bunkamura、ザ・ミュージアムで開催中の「グランマ・モーゼス展」に行ってきました。開催告知のポスターに描かれていた「雪..
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Tracked: 2005-01-18 00:17
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